BOURBON STREET

Step 27   「スコット・ジョプリン/真実のラグタイム」を読んで

木村陽一(ニューオリンズ・ラスカルズ)

伴野準一著ー2007年5月春秋社より刊行

本屋の新刊書の棚で、表記の本を見つけて、いまどきラグタイムの著作など珍しいなと早速購入して読んだのが6月初旬、読み始めにジェリー・ロール・モートンの項があり、その中で、「ワイニング・ボーイ」の曲名が「ウイニング・ボーイ」となっていたので、先を読む前に、先ずは著者にメールで誤りではないかとコメントしたところ、丁寧な 返信を受領し、次版の機会があれば、訂正したいとのこと、そのあと一気に通読して、なかなかの快著であると思うと再度読後感をメールした。

以下はその内容である。これから購読したいと思われる方へのご参考になれば幸いである。

表紙
2,415円

伴野準一様

返信メールありがとうございました。私の指摘は、極く読み始めの段階で、貴殿の著作のきわめて部分的なもので、その後の高邁な「スコット・ジョプリン伝」には、いささかの影響も無いとは思いますが、わが尊敬する古典ジャズの師、ジェリー・ロール・モートンに関しても完璧を期したほうがベターなことは、間違いないでしょう。

ということで、通読させていただいて、「スコット・ジョプリン/真実のラグタイム」というタイトルにふさわしい内容に感嘆し、感激の念を禁じ得ません。ジャズ以前の特にアメリカ黒人音楽のヨーロッパのクラシカル面の情景が良く理解でき、大変勉強になりました。(アメリカ黒人差別の背景とジョプリンの高邁な理想についてはまたそれ以上に強烈に伝わってきました)。

貴著の趣旨とは異なる余談になりますが、私も、ラスカルズ以外に、14年ほど前からヨー・キムラ・トリオというクラシックジャズコンボを立ち上げる際、3歳からクラシックの背景をもつピアノの小川理子には、専らスコット・ジョプリンのラグタイムを覚えてもらうところから始めてもらい、それも最初はある程度楽譜頼りにスタートし、あるところからできる限り耳(ピアノロール録音のみならず、その後は大御所の演奏録音)で覚えてもらうようにしたものです。それは特にジョプリンを経て、ジェリー・ロール・モートンからジェームス・P・ジョンソン、ファッツ・ワラーと進むにつれ、楽譜はあくまで参考にとどめ、そこに小川のフィーリングで自らのオリジナリティも加味するようにしてきました。(余談の追加ですが、東京のアレェクスェイ・ヒロミのカップルとは懇意にさせてもらっています。)

この点、貴殿の言われるジョプリン曲のクラシカル音楽的精神を忠実に演奏したジョシュア・リフキンの評価とは異なることかもしれませんが、そこが、ラグタイムとクラシックジャズとの相違する点ということでしょうか。

いずれにしても、今回の「スコット・ジョプリン伝」は、今古典ジャズを志すもの誰もが、この初期の(ジャズ以前)の黒人楽聖の志を知り、ニューオルリンズジャズのパイオニアとともにその精神と生き様を生々しく学び感じ取って欲しいと思います。

関西の私の周囲のトラッドジャズを志す若手だけでなく、早稲田ニューオリンズジャズクラブの後輩はじめ、広く紹介させていただこうと思います。

この度は、最近とみに得がたくなった古典ジャズの快著を本当にありがとうございました。
貴殿のますますのご活躍をお祈りします。

木村陽一

裏表紙

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