ニュー・オリンズ・ジャズ・カーニバル2007に参加して
今年も期待を胸に会場へ、ぎりぎりに入場したせいか観衆の熱気すら感ずる。すでにどのテーブルでも歓談が始まっている。ジャズを楽しむと共に双方の交流の場として期待が膨らむ。どんなにジャズが変っても、この『ニュー・オリンズ・ジャズ・カーニバル』での演奏は頑なにその表現の魅力を守り、しかもバンド名にNew Orleans、Mahogany Hall等のゆかりの名称が象徴し、その魅力を追求する五バンド。変らないもの、それはニュー・オリンズ・ジャズの良さとGeorge Lewisらの先人の音楽、発生地のニュー・オリンズから飛び火し、伝統を受け継いだともいえるジャズが眼の前に展開。個々に多くのフアンをもつ四つのおなじみの参加バンド。
そこへ東京からゲストのニュー・オリンズ・ジャズ・ハウンズが参加。永年ラグ・ピッカーズで活躍したベテランの加藤晋一(トランペット)、東海林幹雄(ピアノ)の二人が一念発起。若きパッション溢れ意欲的な若手を集めて結成三年目。Bunk Johnson、King Oliverらのジャズを追求し活躍中の人気バンド。達人と新人が創り出すスリリングさは、新バンドとは申せ初めからハイ・レベルで進行中!。末廣会長に紹介され黒の正装でトップに登場し、日頃のプレイを七人で披露(このあと各人が他のバンドに客演)。
二番手には明るく美しいサウンドで楽しませるベテラン楽団、ニュー・オリンズ・グロリーランド・ジャズ・バンド。曲によっては若手の個性的な新谷健介のクラによるゲスト参加、"ウイリー・ザ・ウイーパー" が心に残る。
次いで、名古屋で本業の仕事を努めながら大阪で活躍するタフな池本徳和の率いるニュー・オリンズ・レッドビーンズ。保田貴秀のクラ、ラスカルズのピアノ尾崎喜康が加わり、強烈な "ビューグル・ボーイ・マーチ" から始まる。安定したアンサンブルに終始し、ここでも讃美歌曲では、ハウンズのトロンボーン望月勇志とクラの新谷が加わりダブル楽器の重厚さを発揮。
四番手は、高居俊裕率いるマホガニーホール・ストンパーズの "インディアン・サグア" の力強い曲で盛り上げ、途中からゲスト(守屋雄策(ギター)・新谷・東海林)が加わり、ここでも多くの讃美歌が会場に流れるのも奇妙だが違和感はない。強烈なアタックの高居のペットが冴える。
ここで新しいドラマが生まれる・・・ニュー・オリンズ・ラスカルズの登場。一年余り静養中であった志賀奎太郎が公式の場で久々に歌で参加(曲は "ジャスト・ア・クローザーウオーク・ウイズ・ジー" 他)。ペットは加藤晋一が友情出演し素晴らしい展開。河合良一の心のこもったクラ、加藤のペットのソロで歌を盛り上げ、心に残る印象深いシーンであった。大柄の体躯の志賀は弱々しさを感じさせない。
本人の口から近い将来トランペットでの復帰宣言もあり、間近かか?急用あってバンジョー川合純一の欠場は惜しいが、ラスカルズは揺るぎない創立46年目も全開!。
再度ニュー・オリンズ・ジャズ・ハウンズの登場で佳境に入る。ニュー・オリンズトランペットの雄、Kid Howardを師と仰ぐ加藤が”リバーサイド・ブルース”でバンドが探求するKing Oliverの曲。結成が浅くとも実力派の集まりは圧巻。ユニークな新谷健介の活躍も目覚ましく会場での人気も上々。
『カーニバル』のクライマックスはマーチング・ブラス・バンドと称し、参加ミュージシャンが舞台に並び、客席の合い間を踊りねり歩くフアン!。ミュージシャンも後を追う。会場をジャズが鳴り響き音の大移動、いつも裏切らぬ感動・・・。
《おわりに》 ジャズの特殊性もあって底辺を拡げようとするプレイでは..なく、承知で参加する観客との純粋性こそ、このカーニバルの良さ。いつまでも続くことを願いたい。個性的な音で埋め尽くされたN.O.ジャズの寛ぎの時間、懐かしい創生期のメロディー:マーチあり:賛美歌あり、そこへ全国からファンが集まり、綿密な企画、準備の良さ、ミュージシャンの熱意もあって大盛況、大満足でした。
(イラスト:執筆者、写真提供:奥野博史)