最上階への長いトンネルを抜けると雲の上であった。夕景の底が灰色になった。38階にエレベーターが止まった。
ボックスからからおっさんが出て来て、スカイプラザへ向かった。暖気が流れ出た。おっさんは遠くへ叫ぶように、
「事務局長はん、事務局長はん」
ゆっくり床をを踏んで来た男はセーターで顎の下で包み、前髪を垂れていた。
もうそろそろ開演かとホールを眺めると、客席は埋まっていて、窓の外で稲妻が光っていた。
「口羽はん、私です、御機嫌よろしゅうございます」
「ああ、堀さんやないか。ようきたな。紹介しとくわ。これが司会のクリスや」
ということで、チャリティ・ライブの報告をさせていただきます。
12月4日(日) 16:00〜19:00
ニューオリンズ復興支援「ビッグリバー・チャリティ・ジャズライブ」
OPA38階スカイプラザ
三菱地所等の協賛もあって急に開催が決まった。
寒波襲来、風が強く、38階から見ると、時々稲光がする。
が、むろん、ニューオリンズの現状を考えればなんてことなし。熱心なファンでホールが埋まった。
事務局長とクリスさん
司会はFM-cocoloの人気DJ、クリスさん、毎年「ビッグリバー・ジャズ」で司会をつとめている。
最初にニューオリンズの現状報告と主旨説明があった。
現状報告といっても、クリスさんはニューヨークから帰ったばかりだが、ニューヨークでも詳しい情報はわからないらしい。多くの市民は3月経ってもまだ帰れないまま、家も職も失った人が多い、なによりもハリケーン被害が忘れられるのがいちばん心配という。
今回の募金も、ジャズ支援ではなくニューオリンズ支援で、赤十字経由で送られることになっている。
このライブは無料。
神戸ジャズストリートのジャズ大使が来ていて、募金箱を持って会場を回る。
ということで、演奏開始。
最初からニューオリンズ・ラスカルズ登場である。
ベイズン・ストリートやケンタッキー・ホームなどお馴染みのナンバー。
最後は賑やかに「アラビアの酋長」
窓の外で時々稲光がする雰囲気がいい。
つづいて、ニューオリンズ・グローリー・ジャズバンド。
ニューオリンズにちなんで、「キャナル・ストリート・ブルース」や「ルイジアナ」など。
クリスの報告では、フレンチ・クォーターが紹介されて、店が営業再開などが報道されるが、観光地の一角だけのことで、市民生活の復旧とはほど遠いらしい。
曲名でお馴染みのストリートがどうなのか心配なことだ。
各バンド約30分で、ODJCの4バンド登場。
つづいてはマホガニーホール・ストンパーズ。
川合純一さんがゲストで参加。神戸JSで聴けなかった編成となる。
ワンホーンという珍しいかたちになったが、「アヴァロン」を軽快に吹いて、いつもとはちがった雰囲気である。ワンホーンで4曲。最後の2曲はストンパーズの小林さん(cl)と竹中さん(tb)が参加した。
そして、TONTON森朋子さん登場。華やかになるなあ。
森朋子さんは2曲(もう少し歌ってほしいところ)、ニューオリンズにちなんで……というよりも、ニューオリンズから時々来日しているトプシー・チャップマンさんのナンバーから。(トプシーさんはハリレーン襲来時、ヨーロッパ公演中だった)
ビリー・ホリディからトプシー・チャップマンまで、TONTONのカバー領域、ますます広がっている。
第1部……スカイプラザでの演奏は2時間で終わる。
第2部は、1階、クリスマスツリーの飾られた「桜広場」で。
こちらは「屋外」ではないものの、ちょっと寒い。
階段がバルコニー状になっているところがステージとなる。
2階からODJCマーチングバンドが演奏しながら降りてくる趣向。
ピンカラさんのド派手なスーザホンが電飾ツリーによく映える。
マーチングバンドの演奏の後、ギタリスト・ハル高内さんが登場。
HARU(高内春彦)さんは、今回のニューオリンズ復興支援の主旨に賛同して、東京から特別ゲストとして参加してくれたのである。
雰囲気はデキシーから静かなギター・ソロに変わる。
「天満人」編集長の井上さんがいて挨拶。
あ、そうか、井上さんが発行していたタウン紙「A-Look」に高内さんはエッセイを連載していたのだ。
「有名女優のダンナという紹介のされ方はちょっと気の毒ですよ。すごく温厚な人です」
……確かに。人柄が伝わってくるような音色である。
クリスマスにふさわしいギターが流れて、チャリティ・ライブは19時に終了。
ニューオリンズ市民の皆さんも、何とかいいクリスマスが迎えられますよう祈っております。