今高英一 小野洋 藤本伸誉 堀晃
10月9日(日)
【15時〜】
ニューオリンズ・レッドビーンズ
いよいよ神戸JSも大詰め。
藤本は義理堅くレッドビーンズを聴くためにソニックホールからいちばん遠いNHK「トアステ」まで移動。
やはりここでもレッドビーンズは大受け。
藤本もこの会場の音響の良さに感心……他がよくないというわけではないのだが。
やはりここの設備が突出していいのだろう。
野良青年団
「日本VSオランダで綴るS・ベッシェの遺産 Part2」
小野と堀は神戸女子大教育センターへ。
最前列に陣取ると、横の席でピアノの大野かおりさんがどこかのオジサンにビデオカメラの使用法を説明中。挨拶したら「父なんです」と紹介された。娘の演奏を記録する父というほほえましい光景も目撃したのであった。
全日本デキシーフェスでは来ていなかったトロンボーンの久保青年も今回は参加。
今回2回だけのステージで、熱気あふれる演奏である。
15時10分からほとんど1時間、簡単な曲目紹介だけで、ぶっ通しの熱演。
ちなみに、この会場はエアコンがなく、全会場の中で一番暑い。そのために舞台の照明を落としてあるのだ。
何ステージか聴いたが、ここで上着を脱がずに演奏したのは秋満義孝さんだけ。
あ、キャッスル・ジャズバンドも白のユニホームだった。
野良青年団は黒のステージ衣装で、全員が1時間の文字通りの「熱演」……おそらくたいへんな汗のはず。しかし、最後まで上着着用のままで通したから、見上げたショーマンシップである。
1時間過ぎたあたりで「エーセス・オブ・シンコペーション」が乱入、ビーンVS北中のソプラノ合戦、ハブラケンVS梶航介のスーザホン・バトルと、15分近いセッションが繰り広げられた。
「エーセス・オブ・シンコペーション」をしばらく聴いたところで廊下に出たら、楽屋で上着を脱いだ野良青年団諸君とばったり。やはり暑かったらしく、全員汗びっしょり。
せっかくだから、ミーハーな堀は記念写真をお願いした。
この写真、「2001年宇宙の旅」のラストシーンみたいな、ちょっと不思議な雰囲気になったので、悪ノリしてここに公開。
急いで神戸バプチスト教会へ向かう。
【16時〜】
ニューオリンズ・ラスカルズ
いよいよ神戸ジャズストリート、最後のステージ。
われらジャズ友4人は、締めくくりは神戸バプチスト教会での<JAZZ at Vespers>と決めている。同じ気持ちのファンは多く、「最後はラスカルズでなければ」という声はあちこちで耳にする。
わざわざ教会前の模擬店で待機していた今高はほぼ最前列、小野、藤本もまずまずの席を確保、少し遅れた堀は中央通路に座るが、音響的にはこの席もなかなかいいのである。
最後は、前日と同じくゴスペルの「神戸マスクァイア」のメンバーがふたたび参加、パレードの「聖者の行進」で始まった神戸ジャズストリート、「聖者の行進」で幕を閉じた。
さて……長々とレポートを書いてきたが、神戸ジャズストリートの「全貌をとらえる」という試みは、それぞれが聴いたステージをなぞるだけで終わってしまった。
全容の記述は到底不可能なようである。
そこで、堀の感想を付記しておきたい。
神戸ジャズストリートの面白さとは何なのだろう。
ぼくは「ジャズファンの遊園地」なのではないかと思えてきた。
ちょっと理屈っぽいことを書くと、ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』に、有名な「遊びの4分類」がある。カイヨワは遊びを「競争」「偶然」「模倣」「めまい」に分類した。
代表例を挙げれば、「競争」は運動競技、「偶然」はギャンブルやくじ、「模倣」は演劇や今ならカラオケ、「めまい」はメリーゴーラウンドやジェットコースターなど。
ひと頃流行った「迷路」も、少し時間レンジの長い「めまい」ではないかと思う。
神戸ジャズストリートの面白さは、演奏を聴く楽しみに加えて「迷い」つまり「めまい」が加わるところにあるのではなかろうか。
何度も参加していると、演奏会場がどこかと迷路みたいに迷うことはなくなるが、17会場で同時に進行しているステージのプログラムを見ると、どれを聴こうか「迷いに迷う」つまり「めまい」を覚えてしまう。
目当ての会場がいっぱいで、近くの会場に入ったところで、思いがけず素敵な演奏にであったりする。
そうなると、精密なプログラムを組んで移動するよりも「偶然」にまかせる方が面白いのではないか。むろんいい席をねらって「競争」するのもありだし、手拍子を打って演奏に参加、「模倣」を楽しむこともできる。
神戸JSを「ジャズの遊園地」と思うのは、色々なかたちで「遊び」が楽しめるからだろう。
来年は、いっそのこと、プログラムは一切見ないで歩いてみようかなとも思う。
このレポートを「迷走記」と題したのは、このような意味をこめてである。
ジャズ友4名、神戸バプチスト教会の前で、また来年の再会を約束して解散。
左から、今高、堀、藤本、小野
ここまで読んでいただきました皆様、冗長なレポートにおつきあいいただき、ありがとうございました。
来年、神戸ジャズストリートの「迷路」でお目にかかれますよう。